ミュージシャンの仕事の1つとして、音楽講師があります。
実際に僕の身の回りでも、音楽教室や専門学校などで音楽講師として働いている人はたくさんいます。
こういった人たちと話をしている中で、生徒からの人気が高く、かつ生徒のレベルが高い講師の人にある共通点があったことに気が付きました。
それが、タイトルにもあるように「生徒のモチベーション/やる気を高めるのが上手い」ということ。
今回はその重要性についてお話したいと思います。
音楽講師は生徒の演奏技術を伸ばすためだけの存在ではない
まず、音楽講師の目的と聞かれて、真っ先に思い浮かぶのが「生徒の演奏技術を伸ばす」ということですよね。
確かにこれは重要なファクターです。音楽教室や音楽専門学校の大きな目的の1つでしょう。
演奏技術を伸ばすために、厳しく生徒を指導する先生もいらっしゃいます。
よくドラマや漫画などに出てくるピアノの先生など、厳しく生徒をしかりつけて徹底的に技術や知識を教える様子が描かれますし、
実際に小さい頃、このような厳しいピアノの先生から指導を受けたことがある人も多いと思います。
こういった先生は生徒の演奏技術を伸ばすことを第一に考えているのでしょう。
ですが、私が思うに、ただ厳しく指導して生徒の演奏技術を伸ばすことだけが音楽講師の役割ではありません。
では音楽講師の本当の役割とは何なのか
音楽講師は生徒のモチベーションを上げるための存在
僕が思うに音楽講師の本当の役割というのは「生徒のモチベーションを上げること」です。
生徒の演奏技術を上げたり、音楽知識を豊かにさせたりといったことは確かに重要です。
がしかし、モチベーションを上げることさえできれば、これらは後から付いてきます。一番に優先すべきことではありません。
音楽の楽しさを知った人は勝手に練習したり勉強したりするものです。
最初にも書きましたが、僕の回りで人気がある音楽講師は、モチベーションのコントロールが上手い人が多いです。
こう考えるに至った経緯をお話しましょう。
プロのピアニストが教わった一人目の先生の話
18歳でプロデビューした日本人ピアニスト・松田華音さんと、その母の雅子さんがインタビュー記事で、才能を発見した経緯について以下のように語っています。
雅子さん 30分から1時間程度の個人レッスンで、あまり細かなことはおっしゃらず、好きなように弾かせてくれていたと記憶しています。技術を指導するというより、音や曲に興味を持てるように誘導してくださっていましたね。先生が「これはこういう曲なのよ」と子どもにも分かるように説明してくださり、華音が「じゃあ、これは○○なの?」なんて質問をして。そんなお話をしながら、一緒に曲のイメージを膨らませていました。
華音さん 上手に弾くことを目指していたわけではなくて、ただ演奏することを楽しんでいた、という感じです。
NIKKEI STYLE『19歳の世界的ピアニスト 才能を引き出した母の15年間』より引用
また、『マンガで分かる心療内科』で有名な、ゆうきゆう先生のツイートに以下のようなものがあり、大変反響を呼びました。
プロの練習時間は、必ず「1万時間」を越えていると分かりました。大事なのは積み重ねです。pic.twitter.com/wY3raVQwMT https://t.co/CiI4rO9q9c
— マンガ心療内科/ゆうきゆう/5月25日単行本二冊同時発売! (@sinrinet) 2017年8月11日
これらのエピソードに共通するのは、プロのピアニストの多くは、音楽の楽しさを教えてくれるようなレッスンを受けた経験があるということ。
初めて音楽に触れるときには、辛い練習を乗り越えて、厳しく徹底的に技術の向上を目指すレッスンよりもむしろ、楽しいレッスンが重要という話です。
決して、厳しいレッスンのおかげで音楽の楽しさに気づけたというわけではないようです。
音楽の楽しさと1万時間の法則
さきほどの、ゆうきゆうさんのツイートにもありましたが、「1万時間の法則」というものがあります。
これは、何かを新しく始めて、一流の技術を身につけるためには、1万時間の練習が必要という法則です。
音楽など、競争率の高い分野ではこれが顕著で、ほとんどのプロミュージシャンは例外なく1万時間以上の練習をしていると言われています。
これは僕自身の肌感覚的にも正しいと思っています。
さて、この1万時間の練習を達成するために一番大切なこと、それは音楽の楽しさを知ることだと思います。
1万時間を達成するには、1日8時間練習すれば約3年半、4時間なら約7年かかるんです。
1日4時間やっても約7年ですよ。
もし、音楽の練習が辛いことだとしたら7年も続けられますか?
楽しくなければ1万時間も続かないと思います。
それに音楽講師に習っている全ての人がプロを目指しているわけではありませんが、音楽の楽しさを知ることで練習のモチベーションが上がるのは間違いないですよね。
あと、これもよく言われますが、音楽の練習は毎日続けることがとても大切です。
1週間のうち1日だけ7時間練習するのと、毎日1時間練習するのでは、練習時間的にはどちらも同じですが、後者のほうが伸びやすいです。
つまり、生徒が自主的に毎日練習したくなるような指導をすることが一番重要なのではないでしょうか。
生徒のモチベーションを定期的に上げられるような役割が、音楽講師には求められるように感じます。
まとめ
音楽の先生の役割は色々とありますが、やはり一番重要なのは生徒のモチベーション/やる気を高めることだと思います。
とはいっても生徒によってモチベーションの高め方は千差万別。
むやみに厳しく、または優しく教えたところで生徒が音楽の楽しさに気付けないと何の意味もありません。
褒めて伸ばしたほうが良い生徒、厳しく教えたほうがやる気がでる生徒など、今目の前にいる生徒がどんなことをすればやる気が出るのかを見極める必要があります。
それでは今回はこの辺で。