楽曲を一気に華やかにしてくれるバイオリンやビオラといったストリングスセクション。
そんなストリングスはクラシック系の音楽はもちろんのこと、ポップスにも使われているので、自分の楽曲でも使おうと思っているDTMerの方は多いんじゃないでしょうか。
DTMではストリングス音源と呼ばれるソフトを使ってストリングセクションの音を再現するのですが、ストリングは楽曲の中で目立つことも多く、どんなソフトを選ぶのかが非常に重要になってきます。
とはいえ、ストリングス音源はかなり種類が多く、どれがいいのか分からなくて困ってしまいますよね。
そこで、今回は皆さんが比較しやすいように、おすすめのストリングス音源を以下のジャンル別に紹介しようと思います。
- ポップス、歌モノ、室内楽向け
- オーケストラ、シネマティック向け
- ソロ向け
また、比較しやすいようにそれぞれの音源について以下の項目を筆者なりの視点で比較してみました。
- 編成:各パートの編成
- 奏法:点数が高いほど収録されている奏法(アーティキュレーション)の種類や数が豊富
- リアルさ:点数が高いほど生に近い音
- 打ち込みのしやすさ:点数が高いほどUIや機能、音の使い勝手がいい
- エンジン:Kontakt PlayerやKontaktが必要なのか、もしくは独自エンジンなのか
まずは「ポップス、歌モノ、室内楽向け」から扱っていくので、それ以外の音源を探している場合は下の目次からジャンプしてください。
それではいってみましょう!
ポップス、歌もの、室内楽向けストリングス音源
Session Strings 2シリーズ (Native Instruments)
- 編成:無印とProで違うので後述します
- 奏法:★★★★☆
- リアルさ:★★★☆☆
- 打ち込みのしやすさ:★★★★☆
- エンジン:Kontakt Player、Kontaktに対応
Native InstrumentsのKompleteシリーズに付属していることから、かなりの人が使っているストリングス音源。
実際、ポップスの曲を聴いていると「あ、これSession Stringsの音だな」ということがよくあります。
「Session Strings 2」と「Session Strings Pro 2」があり、機能面も無印とProで違う点が結構ありますので、簡単な比較表を作ってみました。
もっと細かい比較ポイントについてはNative Instrumentsのこちらのページにて確認できます。
ベースとなるサウンド自体にそこまで違いはありませんが、編成や操作性はProバージョンの方が使い勝手が良いという感じですね。
ただ、Proバージョンでも2ndバイオリン専用のパッチがないので、セクションごとに打ち込む場合は同じパッチを2つ立ち上げる必要があります。
(1stと2ndのバイオリンでユニゾンさせる場合は、片方のトラックを半音下で打ち込み、ピッチベンドで上げるという有名な裏技を使うとユニゾンしてる感が出るのでお試しください)
サウンドに関しては、アタックが明確でかなりポップス向けという印象ですね。
ストリングス音源は高価な製品でも結構アタックがもったりしていたりするものがあるのですが、この音源はアタックの粒揃いが非常にいいです。
特に「Accented」という音色はアタック感がありタイトなリズムでもゴチャつかないので、速いテンポの曲で重宝します。
あと、ポップスにたまに使われる「Falls(リリースで音が下がる奏法)」や「Slide Up(半音下からスライドする奏法)」など若干マニアックな奏法も収録されていて、地味に助かります。
またユーザーがかなり多いということもあり、ネット上に使い方などに関する情報が豊富にあるというのもこの音源の魅力の一つではないでしょうか。
使用動画やデモソングなど
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Spitfire Chamber Strings (Spitfire Audio)
- 編成:1stバイオリン4人、2ndバイオリン3人、ビオラ3人、チェロ3人、コントラバス3人
- 奏法:★★★★★
- リアルさ:★★★★☆
- 打ち込みのしやすさ:★★★★☆
- エンジン:Kontakt PlayerもしくはKontakt
Spitfire Chamber StringsはSpitfire Audioというメーカーによる大人気ストリングス音源。
室内楽用の音源ではありますが、人数がちょうどよく、ドライな音も収録されているのでポップスの楽曲によく使われています。
96kHzデジタル収録なので、ハイレゾまで対応可能というのもポイントでしょう。
肝心のサウンドに関しては、Spitfireの音源はデフォルト音量が小さめなので、立ち上げてそのままだとちょっとショボく感じてしまうかもしれません。
ですが、他のストリングス音源と音量を揃えて聴き比べると、かなりリアルで太さも十分あるサウンドという印象になります。
この音源のラインナップは以下の2種類です。
- Spitfire Chamber Strings
- Spitfire Chamber Strings Professional
両者の違いは代理店サイトによりますと以下の通り。
このプロフェッショナル版は「SPITFIRE CHAMBER STRINGS」のパッチをよりフレキシブルにしたことに加えて、4つの追加マイク:warm Close Ribbon (Cr), close Stereo Pair (St), Gallery (G), Outrigger (O) が拡張されています。SPITFIRE AUDIO の標準的なCTA セットアップは、温かみのあるCTAO セットアップになります。
さらに、全てのテクニック(アンサンブルを除く)にはFine (F), Medium (M) , Broad (B) ステレオ・ミックスが提供されています。
SONICWIREより引用
要するに、追加マイクが収録されているという点がProfessionalバージョンの目玉ということでしょう。
個人的にはポップスに使うことを考えている場合は、無印バージョンでも十分だと思います。
筆者はProfessionalバージョンを持っていませんが、そんなに不便を感じることはありません。(もちろん人によると思いますので個人の意見と考えてください)
無印バージョンのマイクは「Close」「Tree」「Ambient」の3種類が用意されています。
これらを自在に混ぜ合わせることができ、音の距離感や空気感なども曲に合わせて自由自在に変えることが可能です。
ちなみに、それぞれのマイクの音をパラアウトすることもできますので、それぞれに別のエフェクトかけるなど、よりこだわった音作りもできます。
また、メイン画面ではCloseとFarというパラメータがあります。
これを上げ下げすると自動でマイクの混ぜ具合が調整されて、手軽に音の距離感が変えられるので、個人的にはこっちのパラメーターの方が使用頻度が高いです。
注意点としては、Close寄りにするほどパートに応じてPanが強めに振られますので(1stバイオリンは左など)、曲を作っている途中でここをいじるとPanや音量バランスを調整し直すことになります。
また、Close側に最大まで振るとかなり距離感を近くできるのですが、Closeマイク単体だと音が硬いといいますかシンセっぽいといいますか……。
距離感が近い音を作るときでも、若干Far側に寄せてあげたりして、Close以外のマイクの音も混ぜてあげたほうがいい感じになるように思います。
また、この音源はKontakt(Kontakt Playerにも対応)で動作し、使いたいパッチを立ち上げて音を鳴らしていくという仕組みです。
メインパッチにはレガートやスタッカート、ピッチカート、トリルなどの基本的な奏法が収録されていて、それ以外にも使用頻度がそこまで高くない奏法専用のパッチや、特殊機能があるパッチもあります。
個人的には、Performance legatoというパッチが便利で使用頻度が高いです。(MIDIの長さに応じて自動でレガートとスタッカートを切り替えてくれる)
奏法に関しては、G線のみを弾いたパッチがあったり、弦の駒よりの場所を弾いたパッチがあったりと、マニアックなものまでめちゃくちゃ充実しています。
打ち込んでいるときに奏法がなくて困るということはほとんど無いでしょう。
マニアックなパッチはそんなに使用頻度は高くありませんが、細かい弾き方の指定をしたい場合には重宝します。
ちなみに、メイン画面にあるDynamics(CC1)とExpression(CC11)はどちらも音量を変化させるパラメーターですが、この2つの違いについても説明しておきます。
- Dynamics:強弱ごとに異なるサンプルが鳴るのでよりリアルに音量が変化する
- Expression:フェーダーで音量を上げ下げするのと同じ効果
これらの違いについても押さえておくと、よりリアルな打ち込みができると思います。
使用動画やデモソングなど
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Spitfire Studio Strings (Spitfire Audio)
- 編成:基本パッチは1stバイオリン8人、2ndバイオリン6人、ビオラ6人、チェロ6人、コントラバス4人(詳しくは後述)
- 奏法:★★★★☆
- リアルさ:★★★☆☆
- 打ち込みのしやすさ:★★★☆☆
- エンジン:Kontakt PlayerもしくはKontakt
Spitfire Studio Stringsは、1つ前のSpitfire Chamber Stringsと同じくSpitfire Audioというメーカーのストリングス音源です。
この音源は「Studio」という名前からも想像できる通り、スタジオで録音されたドライな音が売りになっています。
ラインナップは以下の通りです。
- Spitfire Studio Strings
- Spitfire Studio Strings Professional
無印版は上位版のProfessionalやChamber Stringsシリーズと比べてもかなり安く、「Spitfire Audioのサウンドが好きだけれど予算がそこまでない」という方に人気があります。
無印版とProfessional版の違いは以下の通り。
編成に関して、Professionalバージョンには倍の人数(例えば1stバイオリンなら16人)と半分の人数(1stバイオリンなら4人)のパッチが付属するのが大きな特徴です。
半分の方はディビジ(1つのセクションを分割して別々の動きをさせる)に重宝します。
ただ、倍の人数のパッチには基本的な奏法はありますが、通常パッチや半分のパッチに比べると奏法が少なめなので、注意してください。
また、無印版はマイクが1本のみなので、距離感は変えられません。
Professional版は6本分収録されているので、マイクの音量バランスを調整することで距離感が変えられます。
Treeマイクだけでは曲は作れないというわけではありませんが、歌ものを始めとしたポップスはクローズな音を使うことも多いのでこの点は注意してください。
個人的にはご予算に無理がなければProfessional版をオススメします。
肝心のサウンドに関しては、高音が美しく、現代の曲に必要なクオリティを十分備えていると言えるでしょう。
ただ、この音源は同じメーカーが出している1つ前のSpitfire Chamber Stringsと比べられることも多いのですが、どちらが良いかと言われると結構好みが分かれるところかなと。
この2種類の違いについても簡単に触れておきたいと思います。
まず分かりやすいところでいうと、音の距離感ですね。
StudioのProfessionalは音の距離感を最も遠いセッティングにしたときでも、広めなスタジオ内で鳴っているような結構近い感じ。
一方でChamberの方は一番遠いセッティングにすると、ホールで鳴らしているっぽい響きになるので、かなり違いが出ています。
遠めの響きを使いたい場合はChamberの方が使いやすいでしょう。
逆に距離感が近いセッティングはやはりStudioの方が得意な印象です。
奏法に関しては、Studioも十分充実していますが、Chamber Stringsに比べると若干少ないですね。
細かい指定をしたい場合はChamber Stringsの方がいいかもしれません。
最後にこれは個人的な見解ですが、Studioの方はChamberに比べて、Dynamicsのオートメーションを細かく描いても音色の変化がスムーズではないように感じています。
ポップスならそこまで困るほどではないですが、広いダイナミクスレンジが必要な劇伴などを作る人には向かない可能性があるかもしれません。
やはりどちらも一長一短といった感じです。
どっちがいいかは、好みによるのかなと思います。
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Vienna Chamber Stringsシリーズ (Vienna Symphonic Library)
- 編成:バイオリン6人、ビオラ4人、チェロ3人、コントラバス2人(2ndバイオリン用パッチは無し)
- 奏法: ★★★☆☆
- リアルさ: ★★★★☆
- 打ち込みのしやすさ:★★★☆☆
- エンジン:専用エンジン(詳しくは後述)
Vienna Chamber Stringsシリーズは数々の高品質オーケストラ音源を販売しているVienna Symphonic Libraryのストリングス音源です。
音がドライでなおかつ編成が丁度いいので、ポップスの楽曲でよく使われており、実際多くのプロ作曲家や編曲家が愛用しています。
実はChamber Stringsシリーズは2006年頃からある結構古めな音源ではありますが、サウンドのクオリティが高くロングセラーになっており、2021年現在もまだまだ人気は衰えていません。
そんなVienna Chamber Stringsシリーズには以下の種類があります。
- Vienna Chamber Strings 1(Standard、Extendedバージョンの2種類)
- Vienna Chamber Strings 2(Standard、Extendedバージョンの2種類)
- Synchron-Ized Chamber Strings
1と2は昔からある音源ですが、Synchron-Ized Chamber Stringsは2018年発売の比較的新しい音源です。
ややこしいかもしれませんが、バージョンごとの比較をできるだけ簡単にまとめてみました。
- 「1」と「2」の違い:「1」が通常音源、「2」が弱音器(ミュート)を付けた音が収録されている音源
- StandardとExtendedの違い:Standardは基本的な奏法を収録、ExtendedはStandardにない奏法を追加するためのもの
- 「1、2」と「Synchron-Ized」の違い:前者のエンジンはVienna Instrumentsもしくは別売りのVienna Instruments Pro、後者のエンジンはVienna Synchron Player
筆者はSynchron-Izedバージョンを使ったことがないのですが、代理店のページを見る限り収録サンプル自体はChamber Strings 1と同じで、リバーブを追加したり新しいエンジンにすることによってより打ち込みが手軽になり、リアルタイム入力でも使いやすくなっているようです。
個人的には、リアルタイム入力にこだわるのでなければ「Vienna Chamber Strings 1」のStandardバージョンを買って、奏法に不満があるときはExtendedバージョンを追加購入するのがオススメですね。
あと、すべてのバージョンで別売りのVienna Keyというドングルが必要という点には注意してください。
「Vienna Chamber Strings」の方に関してですが、打ち込みには割としっかり手間をかける必要があり、ベタ置きだとシンセみたいになってしまうこともあります。
ただ、音源自体のポテンシャルはかなり高めで、適切な奏法をちゃんと選んだり丁寧にExpressionのオートメーションを描いたりすれば、かなりリアルになりますよ。
また、打ち込むときの注意点ですが、この音源は2ndバイオリン専用のパッチがないので、バイオリンは同じパッチを2つ立ち上げる必要があります。
1stと2ndのバイオリンでユニゾンさせる場合は、片方のトラックを半音下で打ち込み、ピッチベンドで上げるといい感じになるのでお試しください。
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LA Scoring Strings (Audiobro)
- 編成:最大1stバイオリン16人、2ndバイオリン16人、ビオラ12人、チェロ10人、コントラバス8人(詳しくは後述)
- 奏法:★★★★☆
- リアルさ:★★★★★
- 打ち込みのしやすさ: ★★★☆☆
- エンジン:Kontakt PlayerもしくはKontakt
LA Scoring Strings(LASS)は数多くのプロ作編曲家に愛用されているストリングス音源。
最新バージョンである「LA Scoring Strings 2.5」の発売が2013年なのですが、まだまだ人気が衰えておりません。
日本の代理店を通して買うと未だに15万円くらいしますが、Audiobroの公式サイトにあるStoreページからですと、2021年現在ではかなりお安く購入することができるようになっています。
(買うタイミングにもよりますが、セール時ですと$399になっているのも確認しました)
PayPalが使えるので、海外サイトでの通販に抵抗がないのでしたら、セール時に公式サイトから購入するのが圧倒的にお得かなと思います。
肝心のサウンドに関しては、かなりドライで硬めな印象の音源です。
距離感が近い音なので、歌ものやポップスなどでも使いやすく、他の柔らかい音のストリングス音源と混ぜるのにも向いています。
もちろんリバーブを上手く使えば広めの空間表現もできますので、オーケストラ系の曲でも使えるでしょう。
個人的にはバイオリンの高音域がとてもキラキラとしていて好きです。
ただ、ちょっとピッチが甘いところがあり、「それが人間らしさになっていい」という人もいれば「気持ち悪くてそのままでは使えない」という人もいます。
気になる場合はAuto-Tuneなどのピッチ補正ソフトを使ってあげましょう。
また、編成の自由度が高いのもこの音源の特徴です。
1stバイオリン、2ndバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスそれぞれに5つのパッチが用意されています。
それぞれのパッチごとの人数は以下の通りです。
- 1stバイオリン:ソロ、4人A、4人B、8人、16人
- 2ndバイオリン:ソロ、4人A、4人B、8人、16人
- ビオラ:ソロ、3人A、3人B、6人、12人
- チェロ:ソロ、3人A、3人B、4人、10人
- コントラバス:ソロ、2人A、2人B、4人、8人
ソロから4管編成くらいの大人数まで選択できますので、自由度がかなり高いですよね。
ちなみに、それぞれのパッチは別々に収録されているので、1stバイオリンで16人パッチをメインに使いながら、8人パッチと「4人Aパッチ+4人Bパッチ」でディビジすることも可能です。
ただ、初期設定のままだとパッチごとの音量のバラつきが結構ありますので、音量を調整してテンプレートを作るのをオススメします。
奏法に関しては、必要十分といったところでしょうか。
特殊奏法系は他の音源と比べて多いとは言えませんが、基本的な奏法は揃っていますので十分だと思います。
奏法に関して困ることは、この音源は奏法ごとにパッチが別れていて、キースイッチがそのままでは使えないことです。
そのせいで、デフォルトのままでは奏法を変えるごとに新しくトラックを立ち上げる必要があり、非常に面倒なことになります。
キースイッチを使うためにはARC(Audiobro Remote Control)という機能を使う必要があるのですが、この設定も少し面倒なんですよね…。
1回設定してテンプレートにしてしまえば次回以降はそのまま使えるので、初回だけ頑張って設定しましょう。
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オーケストラ、シネマティック向けストリングス音源
Cinematic Studio Strings (CINEMATIC STRINGS)
- 編成:1stバイオリン10人、2ndバイオリン7人、ビオラ7人、チェロ6人、コントラバス5人
- 奏法: ★★★★☆
- リアルさ: ★★★★★
- 打ち込みのしやすさ: ★★★★☆
- エンジン:Kontakt PlayerもしくはKontakt
Cinematic Studio Stirngs(通称CSS)は、映画のトレイラーなどにも使用されているストリングス音源。
かなりクオリティの高い音源にも関わらず、お値段はストリングス音源の中ではそこまで高いわけではないので、プロ/アマチュア問わず多くの方に使用されています。
名前の通り、シネマティックサウンド向けの大規模なレコーディングスタジオで収録されているのが特徴です。
サウンドの傾向としてもシネマティック系に多い、若干暗めといいますか重厚感があるといいますか、そういった荘厳な雰囲気を纏っています。
編成数は公式サイトや日本の代理店サイトに詳しい記述がないのですが、こちらのサイトなどいくつかの海外サイトを見て調べたところ以下のようになっているようです。
- 1stバイオリン10人
- 2ndバイオリン7人
- ビオラ7人
- チェロ6人
- コントラバス5人
収録パッチに関しては以下の通りです。
- 個別セクションパッチ
- Full Ensemble
- Lite Ensemble (Sustain、Staccato、Pizzicatoのみ)
- それぞれのClassic Legatoバージョンパッチ(Lite Ensembleはなし)
奏法は基本的なものはもちろん、デフォルトでコンソルディーノ(弱音器)のオン/オフもできるので結構充実しています。
奏法の切り替えはキースイッチやCC、モジュレーションホイール等で可能です。
幻想的なレガートから急き立てるようなスタッカートまで、それぞれのアーティキュレーションのクオリティが高いので、幅広いシーンで使うことができるでしょう。
マイクは「Close」「Main」「Room」の3種類があり、それぞれの混ぜ具合を変えることが可能です。(CloseのマイクはPANがあらかじめ振られています)
「Full Ensemble」と「Lite Ensemble」のパッチはマイクの調整ができないので、基本的には個別パッチで細部を詰めていくことになると思います。
その他にもリバーブエフェクトが搭載されているのですが、Roomマイクの音がかなり広めの響きなので、個人的にはリバーブエフェクトはそこまで使用頻度が高くありません。
また、Closeマイクでも結構部屋の響きが入っているので、完全にドライな音が必要な場合にはあまり向かないと思います。
シネマティック系の曲を作るならそこまで気にならないと思いますが、歌ものなどにはドライな音が必要になる場合がありますのでご注意ください。
使用動画やデモソングなど
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Spitfire Symphonic Strings (Spitfire Audio)
- 編成:1stバイオリン16人、2ndバイオリン14人、ビオラ12人、チェロ10人、コントラバス8人
- 奏法: ★★★★☆
- リアルさ: ★★★★★
- 打ち込みのしやすさ: ★★★★☆
- エンジン:Kontakt PlayerもしくはKontakt
Spitfire Symphonic StringsはSpitfire Audioによるシンフォニック用ストリングス音源。
映画のトレイラーや劇伴を作るようなプロにも愛用されている音源で、鍵盤を押しただけでもかなり説得力のあるサウンドが響きます。
96kHzデジタル収録なので、ハイレゾまで対応可能というのもポイントでしょう。
筆者はこの音源を所有していないのですが、一応この記事を書くにあたり、所有者の友人に頼んで実際にソフトを触らせてもらいました。
マイクは「Close」「Tree」「Ambient」の3種類が用意されています。(Closeマイクはパートに応じてPanが強めに振られます)
これらを自在に混ぜ合わせることができ、音の距離感や空気感なども曲に合わせて自由自在に変えることが可能です。
ちなみに、それぞれのマイクの音をパラアウトすることもできますので、DAWのトラックフェーダーで音量バランスを調整したり、トラックごとに別々のエフェクト処理をすることもできます。
注意点としては、Closeマイクがありますが、ある程度広めの部屋で収録されていますので、ポップス向けの少人数編成音源と同じようなサウンドにはなりません。
その点はご注意ください。
また、メイン画面ではCloseとFarというパラメータがあります。
挙動としては以下のようになっています。
- Close~真ん中まで:CloseマイクとTreeマイクの混ぜ具合が変わる
- 真ん中~Far:TreeマイクとAmbientマイクの混ぜ具合が変わる
これを上げ下げすると自動でマイクの混ぜ具合が調整されて、手軽に音の距離感が変えられるので便利です。
ただ、CloseマイクとAmbientマイクを混ぜるという調整はできないので、そういった細かい音作りをしていく場合は個別のマイクのセッティングを変えることをオススメします。
また、この音源はKontakt(Kontakt Playerにも対応)で動作し、使いたいパッチを立ち上げて音を鳴らしていくという仕組みです。
メインパッチにはレガートやスタッカート、ピッチカート、トリルなどの基本的な奏法が収録されていて、キースイッチで切り替えることができます。
それ以外にも使用頻度がそこまで高くないアーティキュレーション用のパッチや、特殊機能があるパッチもあり、奏法に関してはかなり充実しています。(詳しくは代理店のページに奏法一覧の画像がありましたので、そちらを参照ください)
ただ、なぜかスピッカートはあるのに、スタッカートがないのが気になりました。
短い音はスピッカートを多用することになると思いますのでご注意ください。
ちなみに、メイン画面にあるDynamics(CC1)とExpression(CC11)はどちらも音量を変化させるパラメーターですが、この2つの違いについても説明しておきます。
- Dynamics:強弱ごとに異なるサンプルが鳴るのでよりリアルに音量が変化する
- Expression:フェーダーで音量を上げ下げするのと同じ効果
これらの違いについても押さえておくと、よりリアルな打ち込みができると思います。
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Vienna Orchestral Strings シリーズ (Vienna Symphonic Library)
- 編成:バイオリン14人、ビオラ10人、チェロ8人、コントラバス6人
- 奏法: ★★★★★
- リアルさ: ★★★★☆
- 打ち込みのしやすさ: ★★★★☆
- エンジン:専用エンジン
Vienna Orchestral Stringsシリーズは2006年ごろに発売された、ストリングス音源の中ではかなり歴史がある音源です。
最近は他のストリングス音源に押され気味ではありますが、発売から10年以上経った今でも愛用者が多く、根強い人気があります。
サウンドとしては素朴な印象のする音で、シネマティック系やエピック系と言われるような現代的なオーケストラサウンドとは異なります。
クラシックコンサートをホールで聴くような、いわゆる「THE オーケストラ」という感じの普通な音です。
こういった音が出る音源は実はそんなに多くないので、最近流行りの派手なサウンドではなく、クラシカルなオーケストラサウンドを求めている人にはかなりいいんじゃないでしょうか。
そんなVienna Orchestral Stringsシリーズには以下の種類があります。
- Vienna Orchestral Strings 1:バイオリンとビオラを収録
- Vienna Orchestral Strings 2:チェロとコントラバスを収録
- Vienna Orchestral Strings Bundle:「1」「2」がどちらも収録されているバンドル
バージョンごとの比較をできるだけ簡単にまとめてみました。
オーケストラの曲を作る予定でしたら、バンドルがやはりオススメです。
また、この音源にはStandardとExtendedの、2種類のバージョンがあります。
ExtendedバージョンははStandardにない奏法を追加することができますので、奏法が足りない場合は追加購入してみてください。
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ソロ向けストリングス音源
SWAM Solo Stringsシリーズ (Audio Modeling)
- 奏法: ★★★★★
- リアルさ: ★★★★★
- 打ち込みのしやすさ:★★☆☆☆
- エンジン:専用エンジン
SWAM Solo Stringsシリーズは、物理モデリング技術を使って今までにないリアルな質感のサウンドを実現した音源です。
サンプリングで作られた音源とは違い、楽器の挙動をコンピューター上で再現するという特性上、他の音源では不可能なかなり細かいところまでコントロールができます。
ラインナップは以下の5種類です。
- SWAM Violin
- SWAM Viola
- SWAM Cello
- SWAM Double Bass
- SWAM Solo Strings Bundle(全部入り)
肝心のサウンドは、まさに「素材の音」といった感じ。
かなりドライなサウンドなので、オーケストラの音に混ぜて使う場合はリバーブなどを結構強めに掛ける必要があります。
ちなみにこの音源を首席奏者的な扱いにして、他のオーケストラ音源に混ぜるという使い方もかなりアリです。
それぞれのセクションに芯がある感じが出ます。
奏法に関してはかなり豊富で、「あの奏法がない…」と困ることはほぼ無いでしょう。
また、この音源は完全なサンプリング音源と違い毎回出る音が微妙に違うので、同じ音を反復させても不自然な感じにならないというのもメリットです。
ただ、注意点としては打ち込みに割と手間がかかります。
サンプリング音源の場合は録音した演奏を再生しているので、MIDIノートをベタ置きしても音にある程度の表情(人間らしさ)があるのですが、SWAMシリーズは物理モデリングなので、ベタ置きだと本当に無表情なサウンドです。
テンポが速い曲や速いパッセージならそこまで気にならないのですが、テンポが遅い曲は1音1音ごまかしが効かないので、ある程度「聞ける音」にするには細かい調整が必要になってきます。
また、アーティキュレーションの豊富さだけでなく、細かいパラメータがかなり多いのもこの音源の特徴です。
ビブラートの速さやボウイング(弓の切り返しのタイミング)、弓を当てる位置など、かなり多くのパラメータが用意されていて、オートメーションで変化させることもできます。
個人的にはBow Pressureというパラメーターがかなり使用頻度が高いです。
Bow Pressureでは弓を弦に当てる圧力の強さが変えられるのですが、このパラメーターをオートメーションで変化させると、実際にヴァイオリンを弾くときに強弱によって現に弓を当てる強さを変えるのと同じように、音質がリアルに変化します。
加えてこの音源は物理モデリングを駆使しているので、容量がかなり小さいのもメリットです。
サンプリングで作られた音源の場合、容量が何十GB、場合によっては何百GBということもよくあるのですが、この音源はそれぞれのバージョンが約15MB程度。
誤字ではありません。GBじゃなくてMBです…!
他の音源でHDDやSSDがパンパンになってしまっている人でもそれくらいの容量ならなんとか確保できるのではないでしょうか。
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Spitfire Solo Stringsシリーズ (Spitfire Audio)
- 奏法: ★★★★☆
- リアルさ: ★★★★☆
- 打ち込みのしやすさ: ★★★★☆
- エンジン:Kontakt PlayerもしくはKontakt
Spitfire Solo Stringsシリーズは、劇伴作曲家などに大人気のSpitfire Audioというメーカーによるソロストリングス音源です。
Spitfire Audioの音源は高価なものも多いのですが、この音源は比較的手頃なので手が出しやすいですよね。
非常に音楽的なサウンドが手軽に打ち込めるということで人気があります。
ラインナップは以下の通りです。
- Spitfire Solo Strings(バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスのバンドル)
- Spitfire Solo Violin
- Spitfire Solo Cello
注意してほしいのが、バイオリンとチェロの単体バージョンは、バンドルに含まれる「Total Performance」というパッチをバラ売りしたものであるという点です。
つまり単体バージョンには「Spitfire Solo Strings(バンドル)」に含まれるバイオリンやチェロの全パッチが含まれるわけではありません。
Total Performanceパッチは、MIDIノートのベロシティ(強さ)やデュレーション(長さ)などによって自動でアーティキュレーションを変えてくれるというもの。
非常に便利なパッチなのですが、収録されている奏法がバンドルのものよりも少なくなっています。
基本的な奏法はありますが、何故かピッチカートがなかったり、マニアックな奏法に関してはほとんど収録されていないので、ご注意ください。
また、バンドルにはバイオリンが3種類入っています。
- Virtuoso
- 1st Desk
- Progressive
ソロ音源はこの中の「Virtuoso」のみが収録されているという点にもご注意ください。
ただ、その分安価になっているので、奏法が少なくてもいい場合はバイオリンやチェロ単体の音源も選択肢としてアリだと思います。
肝心のサウンドは非常に美しく説得力があります。
バンドルバージョンは収録されている奏法の種類も豊富で、特にレガートが綺麗です。
ただ人によっては、若干もっさり感が気になると思います。
レガートの速いフレーズだと音の繋がりが不自然に聞こえることもあったり、選ぶ奏法によってアタックの速さや明瞭さもまちまちです。
速いテンポでの音の明瞭さなどを求める場合は打ち込みに工夫が必要になってきたり、場合によっては他の音源を選んだ方がいいかもしれません。
ただ、ミドルテンポ以下の速さ、特に1音1音をしっかりと聞かせるようなテンポやフレーズの場合にはかなり適した音源と言えるでしょう。
また、マイクは「Close」「Tree」「Ambient」の3種類が用意されています。
これらを自在に混ぜ合わせることができ、音の距離感や空気感なども曲に合わせて自由自在に変えることが可能です。
ちなみに、それぞれのマイクの音をパラアウトすることもできますので、DAWのトラックフェーダーで音量バランスを調整したり、トラックごとに別々のエフェクト処理をすることもできます。
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Intimate Strings Solo Bundleシリーズ (Embertone)
- 奏法:★★★★☆
- リアルさ:★★★★☆
- 打ち込みのしやすさ:★★★☆☆
- エンジン:Kontakt PlayerもしくはKontakt
Intimate Strings Solo BundleシリーズはEmbertoneによるソロストリングス音源。
Embertoneというメーカーは人によってはサックスのソロ音源で知っているという方もいると思います。
ハイクオリティかつコスパの良いソフトを作ることで評判のメーカーです。
Intimate Strings Solo Bundleには以下の4種類の製品が含まれています。
- Friedlander Violin
- Fischer Viola
- Blakus Cello
- Leonid Bass
それぞれ単体での購入も可能です。
値段としては全部入りバンドルが単体音源約3つ分くらいなので、全部を買うつもりなら4種類入ったバンドルを買うとお得になります。
筆者はバイオリンのみ(Friedlander Violin)を購入したのですが、バイオリン音源に関して言えば音の繋がりが非常に美しいという印象です。
奏法も比較的充実していて、ソロ音源ならこれで十分といった感じ。
デフォルト設定のままだとスラーが非常にもったりしてしまうのですが、SPEEDの設定を調整し直せば音の繋がるスピードも変更することができます。
結構速くすることもできますので、フィドル的な使い方も可能です。
ちなみにこの音源は設定や奏法を結構細かく追い込めるのですが、結構ややこしいので最初は打ち込みにてこずりました。
この音源は操作に若干癖があると言われることも多いので、手軽さ第一優先という方はご注意ください。
また、筆者は使ったことがないのですが、Embertoneからは「Joshua Bell Violin」というバイオリンソロ音源も出ています。
グラミー賞を受賞した経験もあるJoshua Bellというバイオリニストの演奏をサンプリングした音源なので「Joshua Bell Violin」という名前だそうです。
こちらのほうがFriedlander Violinより2年ほど後に発売されたのですが、Joshua Bell Violinのほうが良いという評判が結構あります。
バイオリンのソロ音源を探している方はこちらも要チェックです。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回はオススメのストリングス音源を紹介しました。
自分に合ったものを選んでみてくださいね。
また、筆者は音楽関連の講座動画をYouTubeでたくさん公開しているので、ぜひチャンネル登録お願いします!
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